[Q&A]任意売却した後の残債は大幅に減額というのは本当?
住宅ローンを滞納してしまい任意売却を検討していますが、売却してもローンを完済できずに債務が残ってしまいそうです。
任意売却した後に残った残債は大幅に減額されるか、うまくいけば払わなくて良いということを聞いたのですが本当でしょうか?
任意売却後の残債は減額されるか?
自宅の売却価格が住宅ローンの残高を下回り、任意売却で自宅を売却してもローンを返しきれず残債が残ってしまった場合、その債務は免除や減額が認められるのでしょうか?
結論から言うと、残念ながら免除や減額は認められません。
日本の住宅ローンはリコースローンと呼ばれる方式が採用されていて、担保となっている不動産を売却してもその代金で返済しきれなければ残った債務についても返済義務が残ってしまいます。
「残債は減額される」と安易に言う任意売却業者には要注意
任意売却業者の中には「任意売却で残った残債は減額できますのでご安心ください」という業者がいるそうです。
しかし、そんな都合の良い話はありません。
もしそのような話をされたら悪徳業者か経験の乏しい業者だと考えたほうが良いでしょう。
なお、そのような業者の言う減額される根拠としては2パターンあります。
①サービサーに安値で債権譲渡されるため
②自己破産などの債務整理を前提としている
①については詳しくは後述しますが、サービサーに譲渡されても債務額は減額されません。
②については、確かに債務は減額されますが、裁判所等を通じて自己破産などの手続きが必要になります。
※自己破産は法律で認められた制度ですので、自己破産すること自体は、一つの手段です。問題は自己破産を前提とすることやそのデメリット等を十分に説明せずに、安易に「減額・免除される」という表現を使うことです。
分割返済は認められる?
任意売却後に残った債務は、ほとんどの場合で分割返済が認められます。
月々いくらずつの返済になるかは、その方の収入や生活費などを考慮して現実的に支払っていける額が設定されます。
最終的には債権者との調整のうえ決定されますが、概ね月1~3万円が相場です。
しかし、収入が多い方などはそれ以上の金額が求められる場合もあります。
逆に収入が年金のみの方や母子家庭などの場合には1万円以下で認められることもあります。
ただし、あくまでも分割払いは債権者との合意が必要であり、ごく稀ですが債権者によっては一括返済を求められる場合もあります。
その場合は、弁護士に依頼して法的な債務整理も検討する必要があるでしょう。
債権回収会社(サービサー)に債権譲渡されることも?
任意売却して残ってしまった債務(債権者から見ると債権)は、そのままその銀行や保証会社に返済をすることもありますが、最近では債権回収会社(いわゆるサービサー)に債権譲渡されることも多いようです。
そのため、住宅ローンを借りていた銀行からではなく、全く聞いたことのない会社から突然「債権を譲受したので当社に支払ってください」という通知が送られてくることもあります。
最初は知らない会社からいきなり返済を求められるため驚くかもしれません。
債権回収会社と聞いただけで、強硬な取り立てをされるのではないかと不安になる方も多いようです。
しかし、債権回収会社はサービサー法と呼ばれる法律に基づいて国から認可を受けた会社しかできない業務ですので、いわゆる闇金やヤクザのような脅しや取り立てをされることはありません。
「窓口が変わった」程度に考えておけば良いでしょう。
サービサーは格安で不良債権を買っている?
債権回収会社は、返済が滞った不良債権を金融機関から買い取り、その債権を回収して差額で利益を上げる会社です。(※あくまでもサービサー法という法律の下、国の厳しい管理下に置かれている会社です)
例えば、3000万円の不良債権を1000万円で買い取り、そのうち2000万円を回収できれば1000万円儲かるという仕組みです。
注意すべき点として、あまり経験が無かったり、悪徳な任意売却業者に依頼すると
「サービサーは債権額の10%くらいで仕入れているから20%も返せば十分利益が出ます。だから任意売却で残債が200万円残っても40万円返せば残りは交渉で免除してくれます。」
というようなことを言われることがあるそうですが、それは10年以上前の話です。
昔は、サービサーの仕入れ額は債権額の10~20%と言われていましたが、サービサー業界も競争が厳しくなり最近では40~60%が相場のようです。(債権の種類によります)
そもそも論として、サービサーがその債権をいくらで仕入れたかは債務者には全く関係ありません。
債権とはその金額を請求する権利であり、サービサーはその権利を買っているのです。
そのため、200万円の債権をいくらで仕入れようが200万円請求されるのです。
残債の返済が困難な場合は?
任意売却で残った残債の返済について、万が一でも分割返済に応じてくれない場合や、生活状況から分割返済も厳しい場合は、以下の方法を検討しましょう。
弁護士を通じて分割返済を交渉する「任意整理」
弁護士に依頼して債権者と分割払いの交渉をする方法です。
法律の専門家である弁護士を代理人にすることで、交渉をすべて弁護士に任せることができるうえに、相手に一方的に有利な条件で話を進められることがなくなります。
ただし、任意整理はあくまでも交渉ですので、弁護士が代理人として介入したから必ず応じてもらえるわけではありません。
債務を大幅に圧縮する「個人再生」
個人再生とは、裁判所を通じて債務を大幅に減額する方法です。
また、住宅ローン以外にも借入がある方は、その債務も併せて減額されます。
しかし、「継続的で安定した収入があること」など、様々な要件がありますので、適用できない可能性もあります。
なお、裁判所での手続きは非常に煩雑ですので、弁護士に依頼するのが一般的です。
債務をすべて免責にする「自己破産」
自己破産は、すべての債務を免責にする手続きです。
自己破産というと人生の終わりのようなイメージがあるかもしれませんが、あくまでも法律で認められた再出発のための制度ですのでご安心ください。
もちろん、デメリットもありますのでその点は十分に把握して検討するようにしましょう。