[Q&A]住宅ローンを滞納すると…?(競売までの流れ)
収入の減少や出費の増加によって住宅ローンの返済ができなくなってしまうと、銀行からの督促が来てしまい、最終的には自宅が競売にかけられて強制的に叩き売られてしまいます。
ただし、住宅ローンを滞納するとすぐに自宅を競売にかけられてしまうと誤解をされている方もいますが、競売の開始決定までに半年以上の時間があります。
また競売が開始決定されてからも実際に落札されるまでには更に半年以上かかりますので、住宅ローンの滞納から強制退去させられるまでには合計で1年以上の期間があります。
何としても競売を回避するために、この間に可能な限り早めに対処するようにしましょう。
住宅ローン滞納から競売までの流れ
住宅ローンを滞納してしまうと、概ね下記のような流れで競売が進行していきます。
ただし、ローンを借りている金融機関や保証会社によっても流れが異なります。
ここでは滞納から競売までの一般的な流れをご説明します。
ローン返済停止
住宅ローンの引落口座の残高が引落日時点で不足すると、ローンの返済がストップします。
引落ができないとすぐに銀行から「引き落としができませんでしたのですぐに入金してください」という趣旨の電話がきます。
この時点では銀行はまだ丁寧な対応をしてきますので、「すぐに入金します」と回答すればそれで済みます。
なお、この時点ですぐに入金することができれば大きな問題にはなりません。(ただし、何度も繰り返すと銀行にマークされます)
督促状・催告書(滞納1~4ヶ月)
滞納が1ヶ月を超えると、銀行の対応が厳しくなり、電話も頻繁にかかってくるようになります。
また、「督促状」や「催告書」と言った書面も届くようになります。
なお、銀行によっては滞納2~3ヶ月前後で滞納されたローンの回収を債権回収会社に委託するため、場合によってはこの時点から銀行ではなく債権回収会社から電話や督促状が来るようになります。
この期間、ただでさえ生活が苦しい状況で、度重なる催告の電話が掛かってくると精神的に参ってしまう方も多くいらっしゃいます。
その場合は、弁護士に債務整理を依頼するのも方法のひとつです。
弁護士に依頼することによって、銀行からの連絡はすべて代理人である弁護士にいくようになり、あなたへの電話や訪問は一切なくなります。
【注意:銀行からの電話を無視し続けると…】
任意売却の業者の中には「銀行からの催告の電話は無視して大丈夫です」と説明する業者もあるようですが、大きな誤解です。
銀行からの電話に出ずに折返しもせず長期間渡って連絡を取らないと、銀行はあなたの職場に連絡をしたり自宅に無断で訪問してきます。
また、最悪の場合はあなたの職場に通告して給与の差押をしてくることもありますので、可能な限り連絡だけは取るようにしましょう。
期限の利益喪失(滞納4~5ヶ月)
住宅ローンの滞納が4~5ヶ月に渡ると「期限の利益」を喪失してしまいます。
期限の利益とは「分割で返済する権利」のことで、それを喪失するということは、簡単に言うと「住宅ローンの契約が解除となって残っているローンの一括返済を求められる」ということです。
月々のローン返済でさえままならない状況で、残っているローン数百万~数千万を一括で払えることはまずないはずです。
【注意:期限の利益を喪失してしまうと後戻り不可】
また、期限の利益を喪失してしまうと「今滞納している数か月分を一括で支払うので、ローン契約を元に戻してほしい」と銀行にお願いしても原則認められません。
従って、この時点で事実上はもう後戻りできないことになりますので、何とか今ままローンを払い続けて家を守りたいという場合はこの期限の利益の喪失までに手を打つ必要があります。
代位弁済(滞納5~6ヶ月)
期限の利益を喪失すると、保証会社が付いている場合は保証会社があなたに代わって銀行に一括返済します。これを「代位弁済」と言います。
保証会社が代位弁済すると、窓口が銀行から保証会社または保証会社が委託する債権回収会社に代わり、「保証会社が立て替えて支払ったので、保証会社に一括返済してください」という趣旨の通知が届きます。なお、保証会社がついていない場合は、銀行の窓口が支店から債権回収部門に変わります。
一括請求をされたとしても当然ながら一括で返済することはできないと思いますので、通常はこのタイミングで保証会社が競売を裁判所に申し立てます。
競売を回避する方法として、一般の市場で自宅を売却する任意売却という方法があり、このタイミングで保証会社に任意売却を申し出ることで競売の開始を猶予してもらえます。
競売開始決定(滞納6~8ヶ月)
期限の利益喪失後もそのまま放置すると、保証会社が裁判所に競売を申し立て、競売開始が決定されます。
競売の開始されると裁判所から「競売開始決定通知」という書面が届きます。
また、競売が開始されると裁判所で「配当要求公告」という公告がなされ、自宅が競売に掛かったことが公開されてしまうため、それを見た不動産会社の訪問やチラシが入るようになります。
執行官の自宅訪問・現況調査(競売開始決定後1~2ヶ月)
競売開始決定から1~2ヶ月で執行官が自宅を訪問してきます。
訪問日は事前に書面で通知され、立ち会いを依頼されます。なお、訪問予定日が仕事等でどうしても立会できない場合は、裁判所に連絡をすればある程度は日程の調整に応じてくれます。
訪問の当日は、執行官が不動産鑑定士を連れてきて家の状態を確認します。
この際に「壊れているところはないか?」「誰と住んでいるか?」などごく簡単な質問をしてきますので、わかる範囲で回答しておけば大丈夫です。
なお、執行官というととても怖い人が来て怒られるというイメージを持つ方がいらっしゃるようですが、あくまでも裁判所が任命している人なので、暴言や暴力を振るわれるようなことはなく、淡々粛々と現地を調査をされるのでその点はご安心ください。
【注意:立ち合いを拒否して鍵を閉めておくと…】
競売の執行官は裁判所が任命しているため、強制的に自宅を調査する権限を持っています。そのため、執行官の訪問を拒否して鍵を閉めておいたとしても鍵屋さんが同行して鍵を強制解除して自宅に侵入します。法的な権限を持って自宅を調査するため勝手に家に入られても文句は言えません。
なお、鍵をかけておいた場合、その解除費用(鍵屋さん代)はあなたの負担となり債務に上乗せされますので、できる限り協力するようにしましょう。
入札期日の決定・公告(執行官の訪問後2~3ヶ月)
執行官が自宅を訪問してから2~3ヶ月で入札期日が決定し、通知がされます。
このとき競売の基準価格も併せて通知されます。(ただしこの基準価格はあくまでも目安にしかなりません)
また、競売となったことが裁判所より公告され、インターネットに公開されてしまいます。(自宅の住所や外観写真、室内の写真まで公開されます)
また、この時期から入札を検討している不動産業者や投資家などが自宅周辺を見に来ることが増えます。
入札・開札(公告から2ヶ月程度)
公告から2ヶ月程度で入札が開始されます。
入札期間は約1週間程度で、その後開札となり落札者が決定し、売却許可決定がなされます。
その後、落札者が代金を納付して所有権が落札者に移転し、自宅が落札者の所有物となってしまいます。
【注意:競売開札後もそのまま居座ると…】
なお、原則としては所有権が移転するまでに自宅を明け渡さなければなりませんが、その後も自宅に居座ると最終的には強制執行により強制的に自宅を追い出されてしまいます。
その場合、室内の家具や家電といった動産物はすべて処分されてしまいますので、万が一競売になってしまった場合は強制執行になる前に必要なものを持って退去するようにしましょう。
まとめ
自宅が競売にかけられてしまうと、通常売却するよりも安い価格で売却されてしまったり、プライバシーが守られないなど様々なデメリットがあります。
しかし、競売にかけられるまでには住宅ローンの滞納開始から1年以上の猶予があります。
最後まで諦めず、何としても競売を避けるためにできる限り早めに対策を取るようにしましょう。